アクセンチュアによるゆめみの買収

デジタルサービス開発の新時代

発表日: 2025年5月8日

買収の概要

アクセンチュア株式会社は2025年5月8日、モバイルアプリなどのデジタルサービスの企画開発に強みを持つ株式会社ゆめみの買収に合意したことを発表しました。買収の金額や詳細な条件は非公開とされています。

本合意に基づく株式取得の完了後、ゆめみに所属する約400名のプロフェッショナルはアクセンチュア ソング本部に加わることになります。これにより、アクセンチュアはゆめみの卓越したデザイン・開発能力を獲得し、デジタルサービスの企画・開発・運用における体制を強化することになります。

アクセンチュア

  • 世界有数のプロフェッショナルサービス企業
  • 801,000人の社員が120カ国以上でサービス提供
  • 戦略立案から実行支援までを包括的に支援
  • 生成AIを中心に据えた全社変革の知見

株式会社ゆめみ

  • 2000年1月京都創業のデジタルサービス開発企業
  • 約400名の従業員、資本金1億円
  • 600社以上と協業、全世界6,000万MAUのサービス開発
  • 「デザインエンジニアリング」手法に強み

ゆめみの企業概要

ゆめみは2000年1月に京都で創業され、モバイルアプリ開発とデジタルサービスの企画・開発を専門とする企業です。創業以来600社以上の企業と協業し、全世界で6,000万MAU(月間アクティブユーザー)のサービスを企画・開発してきました。

ゆめみの最大の強みは「デザインエンジニアリング」と呼ばれる、デザイナーとエンジニアが密に連携してワンチームで成果を出す開発手法です。この手法により、迅速かつ高品質なサービス開発を実現しています。

企業データ

設立:2000年1月

従業員数:409名

資本金:1億円

本社:京都府京都市

主な事業内容

モバイルアプリ開発

iOS、Android、Flutterなど

インターネットサービス開発

企画/開発/制作/運用支援

デザイン・イネーブルメント

UX/UIデザイン支援

内製化支援

組織の開発能力向上支援

買収の背景と目的

市場背景

  • 企業と顧客の接点としてデジタルサービスの重要性が増しており、国内市場は2028年までに年平均成長率9.6%で拡大すると予測されています。
  • デジタルサービスの品質は顧客満足度や購買行動に直結し、企業の事業成長を左右する重要な要因となっています。
  • 日本企業では、デジタルサービスの企画・開発・運用などのフェーズごとに担当部門や協力企業が異なることが多く、市場投入やビジネス成果創出までに時間がかかる傾向があります。

買収の主な目的

デジタルサービス開発の加速

ゆめみの「デザインエンジニアリング」手法と迅速な開発力を取り入れ、顧客企業と伴走しながら革新的なデジタルサービスを圧倒的なスピードで市場に投入する体制を強化します。

一気通貫の支援体制構築

アクセンチュアの戦略立案・実行支援能力とゆめみの開発能力を組み合わせ、サービスの企画から開発、運用、改善まで一貫したサポートを提供します。

生成AIとデータ活用の強化

両社のデータ・生成AI活用の知見を融合させ、デジタルサービスの継続的な進化を支援します。顧客インサイトとAI技術を組み合わせた高度なサービス開発が可能になります。

人材の確保と育成

デジタル領域の優秀な人材約400名を獲得し、日本企業の変革と競争力強化に貢献します。多様な専門性を持つ人材が協働することで新たな価値創造を目指します。

両社トップのコメント

アクセンチュア株式会社 代表取締役社長 江川昌史氏

「アクセンチュアは、ゆめみの先進的な開発手法を取り入れることで、お客様と伴走しながら、顧客のニーズを先取りする革新的なデジタルサービスの実現と、絶え間ない成長を支援する体制を強化してまいります。このイノベーションを支えるのが、企業風土やカルチャー、多様な人材の活躍であり、これこそがアクセンチュアの成長の源泉です。」

「ゆめみは、社員の成長を最優先に考え、柔軟で透明性の高い企業文化を醸成し、優れた従業員体験を提供することで知られています。アクセンチュアは、ゆめみの進取の姿勢と革新的なアプローチ、そこから生まれる比類なきスピード感から学びつつ、市場にインパクトを与える世界水準のデジタルサービスを創出し、日本企業の変革と競争力強化に貢献してまいります。」

株式会社ゆめみ 代表取締役 片岡俊行氏

「このたび、ゆめみがアクセンチュアに加わることを喜ばしく思います。『テクノロジーと人間の創意工夫で、まだ見ぬ未来を実現する』というアクセンチュアのパーパスは、『世界中の人々の生活の中で使われ続けるサービスを、顧客企業と共に創りあげる』という当社が掲げるビジョンと驚くほどマッチしています。」

「経営戦略の立案から成果の創出までを包括的に支援するアクセンチュアの知見およびグローバルネットワークと、当社が積み重ねてきた『デザインエンジニアリング』の実績、ユニークで多様な従業員文化、顧客コミュニティを融合させることで、業界の常識を変えるような革新的なデジタルサービスの創出を加速させていきたいと考えています。」

日本のIT業界における買収の位置づけ

「2025年の崖」とIT業界のM&A加速

経済産業省は「2025年の崖」として、日本企業のレガシーシステムの刷新とDX推進が進まなければ、2025年以降に年間最大12兆円もの経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしています。この課題に対応するため、IT業界ではM&A(合併・買収)が加速しています。特に人材不足の解消と技術革新への対応が大きな目的となっています。

アクセンチュアの買収戦略

アクセンチュアは日本市場でも積極的に買収を進めており、デジタル領域での専門技術と人材の確保を目的としたM&Aを展開しています。最近の主な買収には以下のようなものがあります:

近年のアクセンチュアによる主な買収

  • 2024年4月: システム開発のクライムを買収、約200名のエンジニアを獲得
  • 2025年1月: AIとIoT技術の専門性を持つオープンストリームホールディングスを買収
  • 2025年5月: デジタルサービス開発に強みを持つゆめみを買収

グローバルトレンドとの関連

グローバルでも、DaimlerやGeneral Electric(GE)といった大企業が、デジタルビジネスに関する知見やノウハウを持つスタートアップ企業などを買収し、新たな経営モデルや事業モデルを構築する動きが加速しています。例えばフランスのMichelinはタイヤ管理サービス「Sascar」を買収し、「Tire as a Service」という新しいビジネスモデルを構築しました。

今回のアクセンチュアによるゆめみの買収は、このようなグローバルトレンドの中で、日本企業のDX推進を加速させるための戦略的な動きと位置づけられます。

今後の展望と市場への影響

クライアント企業への影響

  • より高速なデジタルサービス開発
  • 戦略から開発・運用までの一貫サポート
  • デザインとエンジニアリングの融合
  • AIと顧客データの高度な活用

競合他社への影響

  • 同様のM&A加速の可能性
  • 独自の強みによる差別化の必要性
  • デジタル人材獲得競争の激化
  • サービス提供モデルの見直し

IT業界全体への影響

  • デザインエンジニアリング手法の普及
  • 内製化支援の重要性の再認識
  • グローバルとローカルの知見融合
  • 業界再編の加速

シナジー効果の具体例

サービス開発の効率化

アクセンチュアの戦略立案能力とゆめみの迅速な開発力の組み合わせにより、企画から市場投入までのリードタイムが大幅に短縮されます。これにより、クライアント企業は競争優位性を早期に確立できるようになります。

AI活用の高度化

両社のデータ分析と生成AI活用の知見を融合させることで、より高度なデジタルサービスの提供が可能になります。特に顧客インサイトを活用した継続的な改善サイクルの確立が期待されます。

グローバル展開の加速

アクセンチュアのグローバルネットワークを活用し、ゆめみの開発手法やサービスを世界市場に展開する可能性が高まります。これにより、日本発のデジタルイノベーションが国際的に広がることが期待されます。

人材育成と専門性の向上

両社の人材交流により、コンサルティングからエンジニアリング、デザインまで幅広いスキルを持つ人材の育成が加速します。これは日本全体のデジタル人材の質の向上にも貢献するでしょう。

中長期的な展望

この買収は単なる企業同士の統合ではなく、日本のデジタルサービス開発の未来に大きな影響を与える出来事と言えるでしょう。以下のような中長期的な変化が予想されます:

スピードと品質の両立の新基準確立

アクセンチュアの戦略立案能力とゆめみの迅速な開発力の組み合わせにより、高品質なデジタルサービスをスピーディに市場に投入する新たな基準が確立されると予想されます。

デザインエンジニアリング手法のグローバル展開

ゆめみの「デザインエンジニアリング」の手法が、アクセンチュアのグローバルネットワークを通じて世界に広がる可能性があります。これにより、日本発のデジタルサービス開発手法が国際的に認知されることになるでしょう。

日本企業のDX推進加速

両社の強みを活かした支援により、日本企業のデジタル変革がさらに加速することが期待されます。特に、エンドユーザー視点に立ったサービス開発と内製化能力の向上が進むでしょう。

テック業界の再編と新たな協業モデル創出

今後もデジタル領域での企業買収が活発化し、業界再編が進むと予想されます。また、コンサルティングファームとクリエイティブエージェンシー、ITベンダーといった従来の境界を超えた新たな協業モデルが創出される可能性があります。

まとめ

買収の意義

アクセンチュアによる株式会社ゆめみの買収は、単なる企業同士の統合ではなく、日本のデジタルサービス開発の未来に大きな影響を与える戦略的な動きです。アクセンチュアは戦略立案から実装支援までの包括的なサービスとグローバルなネットワークを持ち、ゆめみはデザインとエンジニアリングを融合させた迅速な開発力に強みを持っています。この両社の強みが融合することで、クライアント企業にとっては革新的なデジタルサービスを圧倒的なスピードで市場に投入し、継続的に進化させていく体制が整うことになります。

特に日本企業のDX推進が課題となる中、この買収は日本企業のデジタル競争力強化に寄与する重要な動きと言えるでしょう。また、両社の企業文化や人材の多様性を尊重する姿勢も、今後の成功の鍵となるでしょう。

今後注目すべきポイント

  • 統合プロセスの進行状況

    両社の組織文化や働き方の違いをどのように融合していくか

  • 実際のプロジェクトでの成果

    両社の強みを活かした新たなサービス提供モデルの効果

  • 競合他社の対応

    他のコンサルティングファームやITサービス企業の戦略的動向

  • クライアント企業の反応と採用状況

    新たな統合サービスに対する市場の評価と採用動向

  • 人材の流動と育成

    統合後の人材戦略と専門性の進化